後輩の質問に固まる先輩――就社と就職の違い

後輩の質問に固まる先輩――就社と就職の違い

1990年代後半のこと。取材までの暇つぶしに、大手町のとある喫茶店でコーヒーを飲んでいた。新聞を読んでいると、隣の座席から興味深い会話が聞こえてきた。

会話の主は、これから取材に訪問する大手商社の中堅社員と、就職活動で訪ねてきた学生で、恐らく大学の先輩後輩と思われた。折しもこの頃は、アジアの通貨危機ヵτ勃発した時期で、非常に就職難の時代でもあった。先輩は入社7~8年目のちょうどバブル入社組であろう。

先輩は冒頭から前置きなしで、「うちの会社は売上高が○兆円あって、経常利益は○億円、株主資本は○億円で…」と、会社の自慢話を一方的にまくし立てた。

しばらく黙って聞いていた学生だが、ついに「ところで先輩は商社で何をしようと思って志望されたのですか?」と聞いた。思いもよらない基本的な質問に、それまで流暢だった

先輩も、しどろもどろになり、答えに窮してしまった。同じバブル入社世代の筆者は、なぜ先輩が答えられなかったかがわかる。我々の時代は、就職ではなく、会社を看板で選ぶ「就社」だったからだ。

その学生がもし商社に入社していれば、今30代半ばであろう。若手にも活躍の機会が与えられる今の時代は、目的意識をしっかり持つ彼にとって、よい時代になったようだ。

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